晶析分科会の活動概要

晶析分科会が他の学協会との差異をより明確にしている点は次の3点があげられる。

(1) 企業の若手技術者、初学者の実務に役立つ共通の知識を提供すること。
(2) 最先端の情報収集を国際的に行うこと。
(3) 晶析装置設計理論を集大成すること。

つまり、最先端の情報を追求するだけでなく、製造現場で固有の情報にも目を向け、問題解決に寄与する手法であれば、最先端であることにはこだわらないということである。一方で、世界各国で開発されている晶析技術については、国内外を超越して技術者・研究者との交流を深めていくということも積極的に取り組んでいる。そして、最も重視していることは、化学工学の単位操作としての晶析の重要性を認識し、拡散現象と化学反応と相平衡を組み合わせた、装置内現象の解析を行い、装置設計、特にスケールアップ、すなわちコストダウンに貢献する技術を追求することである。

主要な事業
晶析分科会の活動は、年3回の講演会の開催である。また、少人数で焦点を絞った技術を継続的に議論できるように、2000年度にワーキング・グループを組織した。2004年からは、インテンシブ・セミナーと名称を修正し、専門家による連続講演会に発展している。このグループ活動の成果は、分科会の中で適宜発表されている。
これに加えて、専門講座と国際シンポジウムを主要行事としている。国際シンポジウムは、海外をはじめとする多くの参加者間で情報交換が行われる場となるように、他に類のない低廉な参加費を設定している。専門講座は、若手技術者・研究者などを対象とした現場ですぐに役立つ内容としている。1998、2002、2004年度に国際シンポジウム(1998年度は講演会のみ)を、2000、2003年度に専門講座を交互に開催してきた。

国際シンポジウム
国際粉体工業展、POWTEXと同時開催で、工業晶析に関する国際シンポジウムを開催している。日米欧の一流の研究者、技術者を招聘し、講演会、ポスター発表会そしてラウンド・テーブル・ディスカッション、RTDを開催している。この中で、特にRTDは、欧米で定期開催されている工業晶析国際シンポジウムと比較して、本分科会独自の企画として特徴的である。また、日英同時通訳、日英翻訳要旨集など、言語の障壁を取り除き、真に技術に集中した会議ができるように配慮していることも評価されているようである。また、展示会と併催することで、粉体技術とシンポジウムの両方から日本および欧米の技術を概観できるといったメリットもある。他の複数の分科会との合同シンポジウムなども有意義であり、今後とも発展させることが望ましい。

専門講座
2003年11月に実施した講座名は、「基礎から学ぶ最新の晶析技術~装置設計理論・演習、その活用事例~」である。協会での名称は「専門講座」ではあるが、若手技術者・研究者あるいは晶析以外の技術者・研究者などを対象にしている。晶析装置設計理論を理解し活用できるようになるには、表計算ソフトウエアなどで、実データを入力・シミュレーションするのが一番であるということで、最新情報の講演に加えて、パソコンを用いた計算演習を実施している。

専門書の刊行
2000年の専門講座で紹介した工業化事例に、講座での質疑応答をQ&Aとして加えた専門書としてまとめ、「工業晶析プロセス・装置設計理論の応用と実践」(2001年、化学工業社)として刊行した。この書籍は、その後、分科会のセミナー、講演会で用いる実データとして活用されている。

ホームページおよび電子化
冒頭にも示したように、晶析分科会では、2000年から独自のホームページを活用している。ホームページの役割は、会員への情報提供であると同時に、コーディネータ、幹事、事務局間の情報共有でもある。
晶析分科会では、会員の紹介などで講演会をはじめとする行事の参加者に継続して、開催案内を送付するようにしているため、年を重ねるごとに送付先が増加したので、2000年より専用ソフトウエアを開発し、データベース化している。2003年より開催案内の電子メール化を進め、現在会員の70%に対して、専用ソフトウエアから自動発信している。これは、迅速化とコスト削減が目標であり、2004年度には、米国のプロバイダを採用することで、セキュリティ向上とコスト削減を達成した。

技術と展望
日本の晶析技術は、海外でも高く評価されている。それは、日本の産業の驚異的な発展、特に戦後の復興が評価されているからで、晶析技術は、化学産業の発展の中核技術だからである。特に、日本の多くの研究者が、学協会で技術を化学工学の視点で一致協力してきたこと、晶析装置設計理論としてまとめ上げられたことなども考慮されている。
当分科会は、晶析装置設計理論を製造現場の実務として役立たせるための手法、経験を共有化し、理論では説明できない部分をノウハウとして記録することで、将来の新理論の出現に期待するところである。
また、本協会内、粉体工学会をはじめ、他の学協会との連携を重視した活動を進めたいと考えている。

本年度以降の事業
2005年度には、前回同様の専門講座を開催し、若手技術者・研究者を中心として、実習を含めた実用的な知識の共有をめざしたい。また、2004年度からスタートした、インセンティブ・セミナーも実施したい。国際シンポジウムは、2006年のPOWTEXと併催で実施する計画とし前回を踏まえて発展・進化させた内容で進めたい。国内外の参加者への準備は、2005年度からスタートすれば、有効な情報交換の場となるだろう。
晶析装置操作設計法、結晶多形、結晶前駆体の挙動、相平衡の厳密計算について幹事が責任者を担当した。
結晶多形、攪拌などについて、専門家に監修者を依託し、計画・実施している。
これは、豊倉賢先生(初代コーディネータ、現アドバイザ)の発案によるもので、異動などで一時的に晶析に関わらなくなったとしても再び晶析技術を必要とするときが必ずくるから、という理由である。
講演会などでは参加者に質問票を提出いただき、それに対するコメントを組み合わせて、Q&Aデータベースとしてまとめている。