第36回粉体技術専門講座
「基礎から学ぶ最新の晶析技術-装置設計理論と演習、晶析装置内現象を考慮したスケールアップ-」

[概要]

今回のセミナーの特徴は、講演と実習の組み合わせであることです。講演では、晶析の基礎をわかりやすく説明いたします。特に、実務で重要な計測制御データの収集方法、結晶形状に与える晶析条件の影響などについて、じっくりと学習することができるでしょう。実習では、パソコンと表計算ソフトウエアをご用意いただきます。表計算ソフトウエア使って化学工学計算するための基本を丁寧にご紹介します。また、晶析装置の簡易シミュレータを配布いたします。その結果をパソコンを使って、設計線図で解析することができます。粒径分布の解析は意外と面倒なものです。そこで、表計算を用いた手法について、取り上げたいと考えました。プロセス設計のためには、晶析装置の熱収支や物質収支が基本となりますから、実習することができます。攪拌槽の攪拌特性についても計算することができるでしょう。 また、核化現象や成長現象を数値化し、その関係をシミュレーションしてみます。晶析装置を設計するための線図についても解説します。パソコンで特性間の関係をチェックすることで、晶析装置の特性を体験することがもっとも重要と考えています。前回、ご参加された方はもちろんのこと、新たに参加する方にとっても、日々行っている「晶析とはこんなことだったのか!」と実感できるものとなるでしょう。配布資料は、表計算ソフトウエア上で動作する、晶析設計ソフトウエアと表計算ソフトウエアのプログラムファイルなどです。それに加えて、講演資料、マニュアルも充実したものとなっています。

[プログラム]
1日目平成17年11月17日(木)
13:00-14:30[講義]晶析プロセスと装置設計理論(富山大学 城石昭弘氏)
晶析で取り扱う結晶は、無機塩を始め、たんぱく質やアミノ酸など多形を伴う有機物など多岐にわたります。物質によって、成長や核化などの晶析装置内現象は、まったくといっていいほど異なることがあります。 晶析操作は、連続と回分に大別されます。操作方法によって操作因子が異なるのは当然ですが、考慮すべき操作因子が多すぎるのも晶析の特徴かもしれません。装置の設計や操作理論を体系的に説明できないことが多いようです。本講義では飽和溶解度、過飽和度、核発生と結晶成長などの晶析に関わる基本因子を熱力学および溶質の移動現象として基礎から説明します。実用的な晶析プロセスにどのように反映させるのか、具体的にご説明します。また装置設計理論の成り立ちについても、詳しくご説明します。装置設計理論をどのようの活用すべきかについてもふれたいと思います。

14:40-16:40[演習]晶析装置設計理論(日本化学工業株式会社 山崎康夫氏)
こ の演習では、パソコンと表計算ソフトウエアを用います。 ここでは、晶析装置設計線図を表計算ソフトウエア上で計算するソフトウエアと晶析装置の簡易シミュレータを配布いたします。晶析装置設計線図の使い方には、コツがありますが、表計算ソフトウエアならパラメータを変更したときの影響などを簡単に解析することができます。
(1)晶析シミュレータ
ここでは、MSMPR型晶析装置のシミュレータを使った実習を行います。このシミュレータは、過飽和度や流動状態を表すパラメータから、成長速度、核発生速度を計算し、粒径分布、懸濁密度を計算することができます。このシミュレータは、表計算ソフトウエア上に記述されていますので、他の解析と直接連携することが可能です。
(2)設計線図
次に、晶析シミュレータで計算した結果を設計線図を用いて解析してみます。晶析装置を設計するための線図についても解説します。パソコンで特性間の関係をチェックすることで、晶析装置の特性を体験することがもっとも重要と考えています。
(3)晶析装置内現象
核化現象や成長現象をモデル化し、数値を実際に代入してその関係をシミュレーションしてみます。
これらのプログラムは、表計算ソフトウエアのアドインソフトとして開発されており、データベースとともに配布いたします。また、マニュアル、演習の要旨など100ページを超える資料も添付されています。

平成17年11月18日(金)
09:30-11:00[講義]結晶懸濁密度と粒径分布の測定方法(財団法人塩事業センター 長谷川正巳氏)
晶析装置の特性因子は、結晶粒径(分布)、生産速度、核発生速度、線成長速度そして懸濁密度です。生産速度は、プロセスの設計方針や物質収支などから決めることができますが、核発生速度や線成長速度を求めるには、いくつかの仮定が必要になることが多いのです。ですから、懸濁密度は、晶析装置を計測制御するための重要な特性因子なのです。ここでは、懸濁密度を測定するためのさまざまな具体例を解説します。結晶粒径分布は、晶析プロセスに求められる重要な特性因子です。しかし、粒径分布を厳密に検討しようとすると、さまざまな疑問がわきあがってくることでしょう。粒径分布の測定方法とその原理、粒径分布の表示方法など詳細に解説したいと思います。


11:10-12:00、13:10-13:40[演習]物質収支と熱収支(新潟大学 伊東章氏)
VBAやソルバー機能により大部分の化学工学計算がパソコン上の表計算ソフトウエア上でおこなえるようになっています。しかし、表計算ソフトウエアは、科学技術計算を踏まえて制作されていませんので、その利用には、テクニックを要します。ここでは、方程式解法テクニックを体系的にまとめて紹介します。 化学工学計算を実務的に利用することは簡単そうにみえますが、コツがあるものです。本演習では、結晶粒径分布の評価を行います。また、流動状態の計算、晶析関連の物質収支,熱収支問題を例題としてとり上げます。 表計算ソフトウエアの機能・利点を十分に使いこなすスキルを提供することができるでしょう。 
Ⅰ Excelの道具/ Ⅱ粒子径分布の評価法/ Ⅲ撹拌操作の基礎-撹拌動力,混合時間,伝熱-
Ⅳ 撹拌槽の非定常伝熱/

13:50-15:20[講義]アミノ酸晶析における結晶形状制御(味の素株式会社 長谷川 和宏氏 )
晶析により結晶を取得する場合、結晶の形状も重要な要素の一つとなります。結晶の形状により溶液との分離性が変化し、その結果夾雑物の淘汰性に影響を与える場合があります。また取得した結晶が最終製品である場合には、取得した製品結晶の商品としての価値として、形状、大きさ、光沢、透明度、易溶性などが重要視される場合もあります。 これら結晶形状を左右する因子としては、結晶成長速度が上げられ、アミノ酸などの結晶形状は晶析の際混在する夾雑物によって、結晶各面の成長速度への依存性が異なります。本講義では、結晶成長の基礎から解説をはじめ、アミノ酸結晶の成長において夾雑物がどのようなメカニズムで成長速度に影響を与えているかを結晶構造の観点から解析した結果の紹介までを行う予定です。 
1.L-グルタミン酸ナトリウム結晶の外観 / 2.L-グルタミン酸ナトリウム結晶の形状と結晶構造との関係
3. ロイシン複合体結晶の結晶成長阻害機構

15:30-16:30[ 討論]総合討論(千葉工業大学 尾上 薫氏)
本特別講座を通して、総合討論を行います。参加者には、あらかじめ、質問カードをお渡ししますので、どしどし提出してください。「今すぐに解決したい問題」、「基本的でなかなか聞けなかった疑問」など、何でも結構です。物質名など具体的である必要はありません。質問カードに沿って、講演者からのコメントとディスカッションをしたいと思います。 また、各講演と各演習を組み合わせた質問も期待しています。